2017/05/01

【反天連からのよびかけ】03


「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」!?
──違憲の法律はいらない! 天皇は憲法違反の象徴!!

 2017年4月28日
反天皇制運動連絡会

●「国民の理解と共感」というデタラメ!

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の全体像が見えてきた。法案名が最終的にこれに落ち着いたのは四月二六日。政府がこだわった「今上天皇」や「天皇陛下」が削除され、付則が「皇室典範の特例として天皇の退位について定める特例法は皇室典範と一体を成す」と修正されることで、「一代限り」の意味を緩和したことによるという。以下でその概要を見てみよう。
 一条には、天皇が被災地訪問などについて、高齢を理由に、今後これらの活動を自ら続けることが困難となることを「深く案じておられる」との事情を記し、その「お気持ち」への「国民の理解と共感」により、退位を成立させるといったことが盛りこまれるという。
 天皇の勝手な事情から「国民」が天皇の退位希望を忖度し、「国民の理解と共感」によって退位とする?
 こんな条文から始まる法律自体が許しがたい。まずもって、憲法はこのような「象徴」と「国民」の関係のあり方を認めてはいない。また、私たちは「理解と共感」などしていないし、それを求められてもいない。何よりも、退位を決めた主体・責任者は一体どこにあるというのか。
 そしてこの一文によって、天皇の意向で法改正(「特例法」)に至った経緯=天皇の国政関与という憲法違反を帳消しにするというのだから、その稚拙な隠蔽工作も含め、天皇と政府による立憲主義破壊は甚だしい。私たちは、天皇の「退位」の意向表明は「皇室典範」改正の要求を意味し、天皇が国政に関与することを禁止する憲法に違反していることを訴えてきた。このことは、少なくない人びとによっても指摘されている。第一条は、こういった天皇の違憲行為を指摘し抗議する声を封印し、「国民の理解と共感」という虚妄あるいは妄想で正当化しようとする詐欺のような条文である。そのうえ、政府関係者には「天皇の意思ではなく、国民の理解と共感に基づくなら、退位可能という先例になる」と指摘するものもあるという。天皇の意思を忖度する、虚構の「国民の理解と共感」を、今後も勝手な政治のエクスキューズに使おうというのだ。

●身分差別と天皇の違憲行為

 特例法二条以下の概略は以下のとおり。
 第二条「天皇が退位し、皇位継承順位第一位の皇嗣(皇太子)が直ちに即位する」旨を明記。
 第三条、退位後の天皇を「上皇」、皇后を「上皇后」と定める。敬称はいずれも「陛下」とする。

 「上皇」は「太上天皇」の略称だが、「太上」は無上、至上を意味し、天皇と上下関係が出てしまうので「上皇」で収めるという。天皇を至上とするヒエラルヒーが、ここで再確認される。
 以下は、法案を構成する内容として、いま明らかになっている項目だ。

・「上皇家」を補佐する機関として「上皇職」を新たに設ける。
・「皇統譜」に新しい称号となる「上皇」「上皇后」を登録する。
・上皇が逝去した際は天皇と同じ「大喪の礼」を行う。
・上皇、上皇后は天皇、皇后と同じ「陵」に埋葬。
・上皇は皇位継承や摂政の対象とならず、皇室会議の議員にならない。
・養子をとれず皇籍離脱をできない。
・退位の日付にあたる特例法の施行日は、首相が皇室会議で意見を聴いた上で公布から三年を超えない範囲で政令で定める。

 退位後の天皇・皇后については、最高権威となる新天皇に配慮しつつ、しかし退位後も「降格」イメージとならないような呼称・敬称が選ばれた。そして、同じ理由で、死亡すれば「大喪の礼」、墓は「陵」。また、皇族では持てない補佐機関も「上皇職」と名を変えて持ちつづける。要するに退位しても単なる皇族扱い、ましてや「ただの人」ではないのだ。報道によれば、予算も内廷費対象というから格別である。天皇はやめてもほぼ同じ待遇・身分であれば、天皇が二人いるのと同じではないか。
 さらに、退位後の天皇・皇后、新天皇、そして後述する秋篠宮の待遇については、居住場所の変更にともなう経費、「身分相応」の予算、補佐機関の再編など、それに伴う財政的な変更・取り決めも必要になってくる。いまは取りざたされていない皇室経済法の変更も俎上にあがってくるに違いない。
 社会保障・セーフティネットの格下げを余儀なくされているこの社会で、特権階級は庶民感覚では想像もできないほどの税金を使って世代交代を行う。この身分制度を象徴として残し続ける根拠は、憲法の天皇条項にしかないが、その憲法をすら踏みにじる天皇と政府。このような天皇制を日本の伝統・文化と呼び、制度として残すことは、道義的にも制度的にも間違っている。

●めざされる格差是認社会

 天皇退位・新天皇即位後、皇太子不在の事態となる。「皇位」継承者は皇太子の弟・秋篠宮、その次がその息子の悠仁と控えており、「皇太子不在」そのものは制度的に大きな問題とはならない。政府は、次なる継承者である秋篠宮の呼称として、候補に上がっていた皇太子や皇太弟はつかわず、「秋篠宮家」を存続させる方向だ。しかし、公式な場で使うための呼称を新たに定め、「皇嗣」、敬称を「殿下」として、皇太子待遇に「格上げ」する方向で調整に入っているという。秋篠宮が次の天皇となる身分にあることを明確に示すためであることも明らかにされている。英訳は「Crown Prince」。すなわち皇太子である。「他の皇族よりも格が上であると明確にする必要がある」というから、あからさまな話だ。
 予算も皇太子待遇だ。これまでなかった秋篠宮家の補佐機関を「皇嗣職」として設けることも検討が始まり、そのための予算もつけられる。そういった関連予算の引き上げは、「皇族費」の増額で対応するという。皇室の構成はより差別化が図られ、身分によって呼称・敬称・予算が違うことを明確にし、法律で定める。これがいま進められている「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の実体である。また、この一連の事態をめぐる報道によって、格差・身分社会を容認させる空気が醸成されている現実も、見逃せない。

●法案の上程と成立を許さず、抗議の声を!

 結局、この天皇の代替わりとは、皇室内部の身分を再編し、「格の高い」身分を増やし、庶民のなけなしの税金が湯水のように使われる、という話だ。
 こういったことのすべてが、天皇による「生前退位」の意向表明から始まり、天皇の意思を「忖度」する議会や「有識者・専門家」たちによって、政治的な水面下の動きとも絡み合いながら、進められてきた結果だ。私たちがいま目にしていることは、憲法も民主主義も当たり前のように踏みにじられている現実である。
 政府は五月二〇日前後にはこの特例法案を上程し、今国会中に「全会一致で成立」させたい考えであるという。そして、天皇「退位」と新天皇「即位」は二〇一八年一二月中に、「改元」は一九年元旦に、という方向で検討に入っているという。「国民の理解と共感」を全面に出しながら、「国民」にひろく意見を聴くことなど一度たりともなく、国会審議すらまとも行わなおうとしない。ただ「早期成立をめざす」という。天皇課題をめぐり、国会で議論する事自体を「不敬」とするこの国の「常識」が、問答無用でこの事態を動かしているのだ。
 天皇(制)が抱える、これから始まるだろう「安定的皇位継承」という問題もまだ残っている。このことについても、私たちは今後、声を上げていきたい。天皇の、「皇室典範」改正を自らの意志で迫る、あるいは、天皇制の「未来像」を、天皇主導で確定していこうとする、象徴天皇制として明確な違憲行為。そのことによって、議会・言論界が動くこの社会の非民主主義的なありよう。そのすべてに批判の声を! こんな天皇制はいらない、の声を上げていこう!