2012/01/12

”モンスター”24号(2012年1月)主張

怒りを忘れずに、そして今年も

年々、時のたつ時間が早くなり、すぐに一年がたってしまう。だけど、昨年の早いこと早いこと。バタバタしているうちに、どんどん日がたってしまった。特に、衝撃的だった3・11以降、何をどうしたのかもわからないうちに春がすぎ、暑い夏をうろうろしているうちに年末になってしまった感じ。なんともとんでもない一年であった。このごろトンと物覚えの悪い私ではあるが、あの時の腹の煮えるような政府や東電、マスコミなどの対応を、決して忘れてはならない、と改めて思っている。

年末のクソ忙しい時期に天皇誕生日があり、天皇とその一家が皇居で「おてふり」をしていた(反天連ではその日、恒例の集会を行ったのだけど、その模様は「集会の真相」を読んでね)。天皇は11月にマイコプラズマ肺炎にかかり、19日間入院した。その間、皇太子が「公務」を代行したり、今回の誕生日記者会見も中止になった。文書による「ご感想」によれば、主に震災による被害についての記述が多く、特に「厳しい環境の下、我が身の危険も顧みず、専心救援活動に当たった自衛隊、警察、消防、海上保安庁を始めとする国や地方自治体関係者、また原発事故の対応に当たった、東京電力及びその関係者の献身的努力に深く感謝しています」と、やって当然の「献身的努力」に感謝している。地震とそれに伴う津波の被害と、原発事故とではまるで違うのに。原発事故も降って湧いたような事故のような物言いだ。文末にボランティアのことに触れてはいるものの、「公」の仕事をしてる人を褒めてどうする! 彼らはやって当たり前なのだ。それが仕事だ。そして東電やその関係者は、事故の加害者である。それを褒めてどうする! フクイチで事故後の処理にあたっている労働者の被曝のことなど、ないことにするつもりか? 延べで60万人を超える人が過酷な労働をしているし、これからもこの数は増え続ける。彼らの労働がなければ原発は止めることもできないのに。あぁ、まったく……。

今や、災害の復興が大きな経済の中心課題だ。経団連の米倉会長は「復旧工事をどんどん進めれば、それが成長の起爆剤となるはずだ」と述べている(「日本経済新聞」1月1日WEB版)。やっぱり土木事業なのか? やっぱり成長なのか? 増税も、あれほどの災害があったのだから、いくらかの負担はしかたないかもしれないけど、出すべき東電や国が絞るものを絞りきった上での話ではないの? なんでいきなり電気代の値上げの話になるのか、わけわからん。それでも、年末年始の街のインタビューの声は、「なでしこ」に喜び、「絆」を感じ、「ふるさとや家族」を大切に思う、いい「日本人」の姿ばかりだ。この国の人たちは、「絆」というヒモに自らを縛りつけてがんじがらめになってしまっているのか? マスメディアのあまりにひどい情報のたれ流しと、ステロタイプな言葉のオンパレードに辟易する思いだが、私たちはそれに絡めとられないような行動や発信をしていきたい。

さて、反天連も参加している実行委では、年末から2・11反「紀元節」行動の準備に入っている。天皇が入院したことにより、また秋篠宮の発言(天皇定年制)もあって、週刊誌を中心にマスコミの皇室報道が俄然増えてきた。おそらく、マスコミ業界ではXデーをにらんだ体制に入り始めたのではないかと思われる。また野田政権は、園部逸夫元最高裁判事を内閣官房参与に任命した。彼は小泉政権時代に「皇室典範に関する有識者会議」で座長代理を務め、そのときは女性・女系天皇を認める報告書を提出していた。ヒサヒトが誕生してこの論議はその後消えてしまったが、ここにきて再浮上してきた。だけど、今回は「女性宮家」に絞った論議になるようだ。詳しくは桜井大子の「[象徴天皇制の現在]『お家騒動』とXデー」(『運動〈経験〉』34号)を参照してもらいたい。いまのこの国の問題は、そんなことにかまけている場合じゃないだろうと思うが、真剣に論議している人たちもいるのだ。Xデーも射程に入ってきた今後の天皇制と、そして原発事故処理や原発輸出問題、米軍基地問題、社会の右傾化、TPP……そういったことを考える集会にできればと思っている(ちょっと欲張り?)。

今年もまた体力ふりしぼって走ってみますか。みなさんもご一緒に!    (中村ななこ)